知っておきたい手続きの落とし穴
「知らなかった」では済まないことも。
相続や許認可、補助金などの手続きには、意外な落とし穴が潜んでいます。
「これで大丈夫だと思っていたのに……」
そんな思いがけないトラブルを、5つの短い物語でご紹介します。
※以下は法律や制度の注意点をわかりやすくお伝えするための架空の事例です。実際の相談事例ではありません。
第1話|相続(遺産分割協議が無効に?)
ようやくまとまった遺産分割協議。ところが、相続人がもう1人いた!
祖父が亡くなり、親族で遺産分割協議をすることになりました。
相続人の中には遠方に住んでいる人もおり、全員の予定を合わせるだけでも一苦労。
何度も連絡を取り合い、ようやく親族が集まって話し合うことができました。
財産の分け方も無事に決まり、遺産分割協議書に署名・押印。
「これでようやく相続の手続きが進められるね」
誰もがそう思っていました。
ところが、不動産の相続登記を進める際、提出された戸籍と遺産分割協議書の内容から、思いがけない事実が判明します。
「相続人がもう1人いるようですが、この方は協議に参加されていますか?」
実は、親族の誰も把握していなかった相続人がいたのです。
遺産分割協議は、原則として相続人全員の参加が必要です。
せっかくまとまった協議も、このままでは有効なものとして扱えません。
新たに判明した相続人にも連絡を取り、事情を説明して、改めて財産の分け方を協議することになりました。
遠方の親族との連絡や日程調整も、また最初から。
「最初に相続人をきちんと調べておけば……」
そんな後悔が残る結果となりました。
【この事例の注意点】
遺産分割協議は、原則として相続人全員で行う必要があります。
家族や親族が把握している人だけで協議を進めると、後から別の相続人が判明し、協議をやり直さなければならない場合があります。
相続人の人数が多い場合や、過去の相続手続きが終わっていない場合は、特に注意が必要です。
遺産分割協議を始める前に、戸籍などで法定相続人を正確に確認することが大切です。
第2話|産業廃棄物収集運搬業
「元請が許可を持っているから大丈夫」その思い込みで許可取消しに?
ある建設会社では、工事現場から発生した産業廃棄物の運搬を、下請会社に任せていました。
元請会社は産業廃棄物収集運搬業の許可を持っていましたが、下請会社には許可がありません。
「うちは許可を持っているし、うちのトラックを使ってもらえば問題ないだろう」
元請会社の担当者も、下請会社の担当者も、そう考えていました。
下請会社は、元請会社の許可名義と車両を使い、自社の業務として産業廃棄物の収集運搬を続けていました。
ところが、行政による調査で問題が発覚します。
「実際に運搬を行っているのは、許可を持っていない別会社ではありませんか?」
この運用は、無許可営業だけでなく、元請会社による名義貸しにも該当するものでした。
結果として、元請会社の産業廃棄物収集運搬業許可は取り消されてしまいました。
それまで自社で行っていた収集運搬業務も続けられなくなり、取引先との契約や事業運営にまで大きな影響が及びました。
「車を貸しただけのつもりだったのに……」
その思い込みが、会社に重大な結果を招いてしまったのです。
【この事例の注意点】
産業廃棄物収集運搬業の許可は、車両ではなく、事業者に与えられるものです。
許可を持つ会社の車両を借りたからといって、別会社がその許可を利用できるわけではありません。
なお、車両の貸借そのものが直ちに違法となるわけではありません。問題となるのは、実際に誰が、どのような契約・責任関係で収集運搬を行っているかという点です。
許可の名義貸しは、許可取消しにもつながる重大な違反です。
第3話|補助金
「補助金に採択された!」喜んで設備を発注した結果……
ある事業者が、新しい設備の導入を計画していました。
設備の価格は300万円。
補助金を活用できれば、自己負担を大きく減らせる見込みです。
苦労して申請書を作成し、審査の結果、見事に採択されました。
「やった!これで補助金が使える!」
事業者は喜び、さっそく販売業者と契約して設備を発注しました。
ところが後日、補助金事務局から思いがけない説明を受けます。
「この設備は交付決定前に契約されているため、補助対象になりません」
実は、採択された時点では、まだ正式な交付決定が出ていなかったのです。
すでに設備は発注済み。
契約した設備の代金は支払わなければならず、予定していた補助金も受けられなくなりました。
「採択されたから、もう大丈夫だと思っていたのに……」
【この事例の注意点】
補助金は、採択されたからといって、すぐに契約・発注してよいとは限りません。
多くの制度では、採択後に交付申請や経費の確認があり、正式な交付決定を受けてから契約・発注する必要があります。
制度によっては事前着手が認められる場合もあるため、公募要領や交付規程の確認が欠かせません。
「採択」と「交付決定」は別です。契約や発注の前に、必ず確認しましょう。
第4話|許認可申請
「申請書類はサービスで作ります」その言葉に思わぬ落とし穴
ある会社では、長年付き合いのある経営コンサルタントに、許認可申請の相談をしていました。
コンサルタントは制度にも詳しく、申請書類まで作成してくれる頼もしい存在でした。
「書類作成はサービスです。費用はコンサルティング料だけで結構ですよ」
会社側も、特に疑問を持たずに依頼していました。
ところが、ある日、そのコンサルタントが行政書士法違反の疑いで調査を受けることに。
実は、行政書士等の資格や法令上の権限がないにもかかわらず、報酬を得て継続的に官公署へ提出する書類を作成していたのです。
「書類作成は無料だから問題ないと思っていたのに……」
問題となるのは、料金の名称ではなく、実際にどのような業務を、どのような対価関係で行っていたのかという点でした。
【この事例の注意点】
コンサルティング業務そのものが違法というわけではありません。
しかし、他人の依頼を受け、報酬を得て業として官公署提出書類などを作成する行為は、行政書士法による規制の対象となります。
「コンサルティング料」「事務手数料」「サービス料」など、名目を変えればよいというものではありません。
なお、本人による申請や、他の法律で認められた専門家の業務などは別です。
外部に申請書類の作成を依頼する際は、その事業者が適法に対応できる業務の範囲を確認しましょう。
第5話|相続(知らないうちに相続を承認?)
「父の預金を使っただけなのに……」相続放棄ができなくなる?
父親が亡くなり、長男が遺品の整理や各種手続きを進めていました。
父親の銀行口座には、まとまった預金が残っています。
「どうせ相続するお金だし、少しくらい使っても問題ないだろう」
長男は預金を引き出し、自分の生活費や買い物に使ってしまいました。
ところが、その後、父親に多額の借金があったことが判明します。
「こんな借金があるなら、相続放棄をしたい!」
しかし、専門家に相談したところ、思いがけない説明を受けました。
「お父様の預金を自分のために使ったことで、単純承認したとみなされる可能性があります」
民法には、相続財産を一定の方法で処分した場合、相続を承認したものとみなす規定があります。
長男は、相続放棄ができるかどうか、慎重な確認が必要になってしまいました。
【この事例の注意点】
相続では、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も引き継ぐ可能性があります。
相続財産を自分のために使ったり、売却したりすると、行為の内容によっては「法定単純承認」に該当する場合があります。
ただし、預金を引き出した事実だけで、必ず単純承認になるわけではありません。実際の使い道や状況によって判断は異なります。
また、相続放棄には、原則として自己のために相続が開始したことを知った時から3か月という期限があります。
相続するかどうか判断する前に、財産や借金の状況を確認し、相続財産の取扱いに注意することが大切です。
最後に
今回ご紹介した5つの物語は、いずれも架空の事例です。
しかし、法律や制度を十分に確認せずに手続きを進めることで、思いがけない問題が生じる可能性があるという点は共通しています。
「知らなかった」「大丈夫だと思っていた」
そんな事態を防ぐためにも、手続きを始める前に、必要な確認をしておくことが重要です。
オネット行政書士事務所では、相続・遺言、建設業許可、産業廃棄物収集運搬業許可、各種許認可、補助金申請支援などのご相談を承っています。
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